診療についてMedical Treatment

COPD∙禁煙相談COPD & No Smoking

最近注目されているCOPD

長引く咳の原因として最も考えておかなくてはならない病気は、なんと言っても「気管支喘息」であり、「気管支喘息」以外の原因としては、喘息の前段階とも言える「咳喘息」、アレルギー性の咳である「アトピー咳」、副鼻腔炎・鼻炎との関連がある「副鼻腔気管支症候群」が代表的です。

COPDはタバコ病

原因のほとんどは習慣的喫煙、すなわち、COPDはたばこ病です。喫煙を続けるかぎり年々進行していきます。

多くは40歳以上で発症し、60~70歳代と高齢になるほど、咳、痰、息切れなど、はっきりした症状を示すようになります。重症化すれば、身のまわりのことをするにも息切れが強くなり、生活に非常に深刻な不自由をきたす病気です。

COPDはたばこ病であると申しましたが、わが国でのCOPD患者さんの増加について考えると、昭和20年代から40年代にかけてのたばこ販売の増加は著明であり、平成年代に、そのボディブロー的影響の一つがCOPDという表現型をとってきたと理解されます。

たばこの煙には種々の組織傷害作用があり、肺胞では肺胞壁が破壊され、空気の出し入れがしにくくなり、気管支壁は炎症による浮腫と分泌物の産生が多くなるため痰が増加します。

さらに恐ろしいことに、この傷害作用は、受動喫煙でも同様なのです。すなわち、一人がたばこを吸うと、たばこを吸わない周囲の人にも重大な影響を及ぼすわけです。 したがって、今後10年から20年、COPDはわが国の医療において大きなウエイトをしめてくることは確実です。

img1OPDの起こり方

COPDの症状

繰り返しますが、わが国におけるCOPDの原因のほとんどが習慣的喫煙です。したがって、喫煙のボディーブローが効いてくる、大体40歳をすぎたころから、坂道や階段での息切れ、慢性的な咳、痰などの症状が現れ、次第に進行していきます。

進行していくと日常生活での支障が大きくなり、QOL(生活の質)が著明に低下してしまいます。すなわち、喫煙を続け、適切な治療がなされなければ、息切れのために体を動かすことが少なくなり、四肢の筋力が低下して、わずかな動作でもさらに息切れをきたすようになってしまいます。

この悪循環の行き着く先は、日常生活もできず、寝たきりの状態なのです。こうならないためには、COPDの早期診断と発症早期よりの適切な治療が重要となるわけです。

COPDの診断・治療

COPDの診断はスパイロメトリーによるFEV1およびFlow-Volumeカーブのパタンからなされます。これは、呼吸機能の基本的検査であり、恐れるような検査ではありません。無症状の喫煙者でも、スパイロメトリー検査をしてみると、COPD予備軍あるいは早期COPDと診断される場合があります。ましてや、息切れ、咳、痰などの症状がある喫煙者は、COPDの可能性が非常に高いと言えます。

したがって、治療の第一歩・大前提は禁煙です。禁煙なくしてCOPDの治療は成立しないと言っても過言ではありません。その上で、薬物療法が考慮されます。

COPD長期管理においては、長時間作用型吸入抗コリン薬、長時間作用型吸入β2刺激薬、貼付β2刺激薬、徐放性テオフィリン薬という気管支拡張薬が治療の主役となります。この点は、気管支喘息の長期管理と大きく異なるところです。

これらを、単独、あるいは、併用して治療を組み立て、適宜、rescue useとして短時間作用型吸入β2刺激薬、あるいは、短時間作用型吸入抗コリン薬を用い、さらに、増悪を繰り返す場合には、吸入ステロイド薬を追加することとなります。そして、薬物療法のみではどうしても難しい場合、在宅酸素療法の導入となるわけです。

以上がCOPDの診断・治療の概略ですが、これをどのように進めていくかが、専門医の腕のみせどころなのです。

禁煙相談

COPDはたばこ病であり、治療の大前提が禁煙であることをお話しましたが、習慣的喫煙状態から禁煙するのは、なかなか大変なことです。

タバコがやめにくいのは、ニコチン依存と心理的依存の二つの要素が根底にあるからなのです。ニコチン依存とは、タバコに含まれるニコチンによってつくり出される身体的依存状態のことであり、心理的依存とは、それまでタバコを吸っていた状況になると急にタバコがほしくなる状態のことです。

喫煙が体に悪いものであり悪影響をおよぼすことは、みなさんよくご存知です。COPD(肺気腫)に限らず、がん、心筋梗塞、脳血管疾患など、多くの疾患に悪影響をおよぼします。喫煙者の8割が、実は禁煙したいと思っているという調査もあります。

しかし、現実はきびしい、禁煙ができない、というのが、実際のところなのでしょう。そこで、禁煙サポートを中心とした禁煙外来が必要となるわけです。身体的なニコチン依存に対しては、バレニクリン内服薬やニコチンパッチなどを用いてサポートし、心理的依存に対しては、日常生活の工夫などのアドバイスを行い、ひたすらがまんするつらい禁煙を、できるだけ無理なく禁煙できるよう道案内をするわけです。

もちろん、魔法の薬はないわけで、禁煙の主役はご本人ですので、「禁煙するぞ!」という強い決意が前提となることはお忘れなく。